はじめに
バラは強い植物です
「バラは大変」「枯らしそうで怖い」という印象を持っている方も少なくありません。しかし、実際に育ててみると、バラのたくましさに驚かれる方も多いのではないでしょうか。多くの四季咲き性のバラは、春から秋まで繰り返しよく咲く働き者で、肥料を欲しがるのも頷けます。
まずは第一歩として、
- ガーデニング用の品種を選ぶこと。
- 接ぎ木苗の良い苗を購入すること。
そして、初心者さんはその中でも「育てるのが簡単」と言われている品種のアドバイスをもらうことです。
バラとのかかわり方は人それぞれで、納得の度合いも違います。
- 大きくて良い花を咲かせたい方。
- ベランダ栽培を行っている方。
- あまり手をかけられないけれど、バラを育ててみたい方。
- 庭全体でバラと植物との共存を望む方。
などなど。
バラは元来強く、そうそう枯れるものではありません。また、栽培方法が確立された植物で、栽培本が数多く出版されています。細やかにお世話をするとその甲斐あって更に美しく、そして大雑把なお世話でもそれなりに美しく応えてくれるのもバラの魅力です。
水やりが一番!
バラが枯れる致命的な大きな原因は、以下の3つ。
- 根を完全に乾かす。
- 株元にカミキリムシが入る。
- 根頭癌腫病が発生する。
※当園では癌腫対策を施した台木で生産をしていますので、 発生率が大変低いです。
お客様とお話ししていても、「根を完全に乾かす」のが一番多い原因のように感じています。購入した鉢のまま放置していませんか?
早めにバラの培養土を使って大き目の鉢か地植えに植え替えをしましょう。
水やりのタイミングは、基本的に朝9時頃までに済ませましょう。表面が乾いたらたっぷりと鉢底から流れ出るくらいに与えます。毎日チョロチョロと少量の水やりを繰り返すのは良くありません。緩急をつけた水やりで根を鍛え、かつ、鉢の中をいつも新鮮な空気と水に入れ替えましょう。
まずは一年育ててみましょう!
誰でも最初は初心者さんです。お好みに合わせて「バラってこんなに楽しいんだ!」と思える品種をご提案しますので、お気軽に相談してください。そして、肩の力を抜いて育ててみてください。
このページや栽培本などを参考に、まずは1年間付き合ってみましょう。
繰り返しになりますが、根を完全に乾かさない限り、そうそう枯れたりするような弱い植物ではありませんよ。
お手入れ
年間スケジュール
一年を通してバラと接することで、「人間が朝起きて歯を磨いて…」と同様に、「冬になったら剪定して、春先に肥料を与えて…」とそのスケジュール通りにすることが意外と楽に感じてきます。基本は毎年同じですので、毎年スキルアップしていくことでしょう。たとえ、その年悪天候で何となくうまく栽培できなかった場合でも、冬になったら剪定し、葉を落とし枝だけになりますので、いったん全てがリセットされ、新たな気持ちで春を迎えることができます。
バラの花はことのほか美しく、お世話の加減で花が違ってくるので、更にバラを美しく咲かせたいという思いが様々な「バラの栽培法」に書かれています。多少の表現の違いがあっても、だいたい主旨は同じではないでしょうか。
まずは一年、基本となる栽培本を参考にできる範囲で怖がらずにやってみてください(水だけは重要!)。まずは触れることで分かることが沢山ありますし、理解の度も深まり、「バラって素晴らしい!」と感じていただけると思います。たとえ葉っぱが全部落ちてもまた芽吹いてくる植物はそうそうないはずです。
強いて言えば、剪定や誘引もしなくとも花は咲きます。自然の中ではそうなのですから。
植え付け
病気に強い 良い苗を選ぶ
接ぎ木苗を選ぶ
ガーデニング用バラ苗はほとんど接ぎ木が選ばれています。日本の厳しい気候に負けない「ノイバラ」の台木に芽接ぎ、切り接ぎをして生産しています。まず、挿し木ではなく、接ぎ木苗を選びましょう。病気にも強く、育てやすいでしょう。
品質として、芽接ぎ苗>切り接ぎ苗>>>>挿し木苗の順番です。
大苗を選ぶ
バラ苗は「新苗」と「大苗」があります。初心者の方には十分に育った「大苗」が失敗が少なくお勧めです。
専門店で選ぶ
知識が豊富で管理が行き届いたバラ苗の実績のある園芸店で選びましょう。あとで困ったときにもアドバイスを受けることができます。実店舗があれば、実際の花を見ながら選ぶことも可能です。私たちはバラ苗の生産者として、育てやすい苗、病気が出づらい苗を目指しています。当園の苗は台木生産の段階で根頭癌腫病の予防を施し、芽接ぎを行っています。
※詳しくは「私たちのバラ苗づくり」をご覧ください。
新苗(1年苗)は春に購入後なるべく早く植え付けましょう。大苗は周年植え替え可能ですが、生産用の鉢は小さく、水切れや根詰まりを起こさないように早いに越したことはありません。休眠期12~2月に植え付けるときは、根鉢を崩しますが、それ以外は根鉢を崩さないように気を付けて植え付けます。
陽当り、風通しの良い場所がバラの生育も良く、病害虫の発生も少なく楽に育てられます。
特徴 | 流通時期 | 植付時期 | |
---|---|---|---|
新苗 (1年苗) |
生まれたばかりの若い苗。小さなポットで販売されている。 | 4月~6月 | 4月~6月 購入後すぐ |
大苗 (鉢苗) |
新苗を1年以上育てた苗。葉や花が付いている場合もある。 しっかりとしていて失敗が少ない。 |
3月~11月 | 周年可能 なるべく早く |
大苗(冬) | 新苗を1年育てた苗。冬の剪定を済ませた状態なので、 蕾や葉は付いていない。根付きが良い。 |
12月~2月 | 12月~2月 |
市販のバラの培養土でまずは第一歩
バラの生育に適した土とは、保水力があり、しかも排水と通気性が良く、肥料分の保持の良い土が最適ですが、初心者の方は専門店の「バラの培養土」で始めましょう。既にブレンドされていて何かを混ぜる必要がありませんので、手間がなく安心して使えます。ただし安価なものはお勧めしません。
ご自分で土を作る場合は、目安として、完熟のたい肥を土の1/3混ぜるのが一般的に良好な土と言われています。
植え付けの準備
まずはこれだけ準備しましょう!
- 好きなバラ苗
- バラの培養土
- 完熟のたい肥
- 病害虫対策のスプレー
- 手袋
- 植替え用の鉢
(地植えの場合はシャベル) - 鉢底石
(鉢植えの場合、必要であれば) - バラの肥料
- はさみ
- スコップ
- 木立ちバラ(ハイブリッド・ティ、フロリバンダなど)………株間60~100cm
- シュラブ系………株間1.5mを目安に品種の伸長力を考慮し調整します。
- つるバラ系………株間2mを目安に、品種の伸長力を考慮し調整します。
- ミニチュアなど小型の木立バラ………株間30~50cm
※いずれも1列または2列植え(つるバラ系は1列植え)が後の管理が楽です。また株間の広い方が陽当り・風通しが良いので、生育も良く病害虫の発生も少なくなります。
- 木立性バラ(ハイブリッド・ティ、フロリバンダなど)……………8号鉢以上
- つる性バラ(つるバラ、つる性オールドローズなど)……………10号鉢以上
- ミニチュア、小さめ木立オールドローズ……………………………7号鉢以上
※1号をだいたい3cmと考えて、8号鉢の場合は、8×3で直径24cm位の鉢とお考えください
鉢への植え付け方法
鉢苗は周年の植え付けが可能です。お買い求めいただいた鉢は栽培用で小さいため、水切れの大きな原因となります。なるべく早く植替えて根を伸ばし葉を繁らせるようにしましょう。それが株を育てることになります。
- 鉢のサイズは木立ちタイプであれば、8号鉢以上、つる性タイプであれば、10号鉢以上をお勧めします。
- 鉢穴が小さい場合は、排水をよくするために鉢底石を入れましょう。
- バラ専用の培養土を入れます。
培養土の商品ページはこちら - 購入した苗の株元(接ぎ口)をもってポットから抜き、根鉢を崩さずに植え付けます。ポットをポンポンと外側から叩くと外れやすいです。
- 苗は接ぎ口が土より上に出るように、培養土で高さを調整しましょう。
- 根と土が密着することを意識しながら、且つ、がちがちに固めないように土を入れましょう。鉢をゆすって土をならします。
- 根を守る、病気予防、雑草予防のため、土の上に高さ2~3cm程度「完熟のたい肥」を敷きましょう。(マルチング)
- 底から流れ出るまでたっぷりと水を与えます。完了時にウォータースペースとして少なくとも5cmは確保するように植え付けましょう。鉢植えの場合は、水やりをしながら、同時に鉢底から水が流れ出るのを確認してください。植えつけ後も、水が乾き気味と思ったら、たっぷり灌水していきます。
※ウォータースペースとは、水やりの時に鉢の上部に一時的に水が貯まるスペースのこと。鉢の上から5cmを目安に土を入れる。 - 植えつけ後10日を目安に根が新しい土に馴染みはじめた頃に、肥料を与え始めましょう。与えるタイミングや量はご使用の肥料の使用方法に従ってください。
地植えの植え付け方法
地植えにすると根が良く張り、バラ本来の大きく色鮮やかな花が咲き、つるバラはベストパフォーマンスを見せてくれます。根付くとよっぽどの猛暑でない限り水やりは不要になります。
- バラを植えたい場所を決めます。木立ちバラは株間80cm、つるバラは2mを目安に、品種に応じた株間を決めます。
- バラを植える場所に「バラ穴」を掘ります。理想は直径60cm深さ60cmですが、可能な範囲で構いません。できるだけ土を入れ替えるように心がけます。
- 「オリジナルのバラの培養土 20?」をそのままストレートで入れてください。何かを混ぜる必要はございません。少々元の土が悪くても、土を入れ替えることで、多くの問題は解消されるでしょう。1つのバラ穴につき2袋半~3袋入れるようになります。
- 接ぎ口が土より上に出るように、培養土で高さを調整しましょう。
- 根と土が密着するように意識しながら、培養土を入れていきます。
- 新しい土に水が行き渡るように与えます。水が引いたら再度与え、土が下がるようであれば足します。
- 根を守る、病気予防、雑草予防のため、株廻り直径60cmを目安に土の上に高さ約7~8cm程度「完熟のたい肥」を敷きましょう。(マルチング)
- 翌日以降は表面が乾いたらたっぷりの水、というように緩急をつけた水やりを心がけ、だんだんと水やりの間隔を広げていきます。そうすることで早く根付き、水やりをしなくて済むようになります。地植えの場合は、バケツ1杯(18リットル)を与え、水が引いたらもう1回同量を与えましょう。
- 植えつけ後10日を目安に根が新しい土に馴染みはじめた頃に、肥料を与え始めましょう。与えるタイミングや量はご使用の肥料の使用方法に従ってください。
植え付けQ&A
- 地植えと鉢植えはどちらがいいの?
- バラは落葉低木樹ですので、可能であれば地植えの方が生育も旺盛ですし、管理が簡単です。根が張ることで株が充実し、その花はバラ本来の美しさを見せてくれます。しかしながら、玄関に移動をしたい、地植えができない、など様々な条件にも応えてくれるのが鉢植えです。鉢植えでも十分に楽しめますので、是非良い苗良い培養土を選びスタートしてください。
- プラスチック鉢と素焼き鉢はどちらがいいの?
- バラ用に商品化されたプラスチック鉢は鉢底の切れ込みが多く、水はけよく作られています。軽いのも魅力です。素焼き鉢は、根の呼吸がしやすいこと、鉢中の温度が急上昇しづらいこと、デザインが落ち着いていること、などが長所ですが、重いため例えば土替えなどの作業がおっくうになることもあります。それぞれ利点がありますので、お世話する環境で選んでください。
一般的には、素焼き鉢>プラスチック鉢 ですが、個人的には、「お世話をするプラスチック鉢」>「土替えを行わない素焼き鉢」、と思っております。
- たい肥と肥料は違うの?
- たい肥は、植物や動物の糞などを積み上げ微生物の働きで適度に分解したものです。腐葉土や発酵牛糞が代表です。土壌改良剤で土質をよくしたり、病気予防のため地表に敷いたりします。市販されているたい肥は品質にかなりなばらつきがあります。完熟品は安価にできるものではありません。粗悪品を選ぶとガスが発生し根を傷める原因となりますので、品質の良いものをお選びください。
肥料はパッケージに窒素:リン酸:カリ(P:N:K)と書いてあるとおり、バラの生育に必要な栄養を配合したものです。バラほど繰り返し美しい花を咲かせる樹木はそうそうありません。そのためにも追肥で栄養を補ってあげましょう。
【大切】水やり
バラは強い植物ですが、根が完全に乾いてしまうと枯れてしまいます。土が乾いてきたら、乾かしすぎないうちにたっぷりと水を与えます。土に水が行き渡ることで、空気の入れ替えもできます。
灌水のタイミングは、光合成の活動を考え、朝9時頃までに済ませるのがベストです。
また、蕾がこれから咲こうという時期は、バラは一番水を欲しがり、水下がりが発生するのは蕾からです。このことを念頭に置いて、折角の蕾を枯らさないようにしましょう。
鉢植えの場合
鉢土の表面が乾いたら、鉢底から流れるくらいたっぷり与えましょう。できれば朝の9時頃までに済ませられたらベストです。朝1回の水やりで持つようであれば夕方は不要です。夕方の水やりは病気の原因になりうるので、できるだけ避けたほうがよいでしょう。
やりがちなのは、毎日少しずつコップ1杯くらいずつ与えてしまうこと。量、タイミングともに良くありません。緩急をつけた水やりがバラを育てるコツです。水やり後の鉢を持ってみて、水が行き渡ったときの重さを感じてみてください。そうすると、鉢を持つだけで水が必要かどうかもわかってきます。
また、できるだけ葉や蕾には水がかからないようにすることで、病気予防にもつながります。
地植えの場合
緩急をつけた水やり、つまり乾燥と灌水を繰り返すことで、根がしっかりと伸びていきます。これを私たちは「根を鍛える」と呼んでいます。いつも湿った状態にしておくとその環境に慣れてしまい、奥深くまで根を伸ばしていかなくなります。植え付け2週間はデリケートな状態であり、根が伸びていませんので、水やりをたっぷり(バケツ1杯、18?目安)行うことをお勧めしますが、その後はだんだんと「根を鍛えて」いきましょう。
最初は2日に1回→2週間後には3日に1回→更に2週間後には4日に1回→更に3週間後には5日に1回…というように水やりの間隔を広げていきます。こうした水やりを繰り返していると、春に植えつけた苗は、夏ごろには水やりから解放されることでしょう。また、水流は柔らかくし、水の跳ね返りを抑えると病気予防にもなるでしょう。
台風一過の風が強い晴天の時などは、意外と土が乾くものです。気温上昇に従って新芽が萎れかけてきたら水切れのサインです。バラが水を欲しがっているのに、「昼間だから水がお湯になる」という理由で水やりを控えて、根が乾燥しきってしまうことがあります。
そんな時の最優先は水やりです。昼間でも与えてください。お湯になるのではと心配であれば、鉢に板を立てかけて日陰を作ったり、2重鉢にするなどして、水の気温上昇を抑えてあげましょう。
夏場の高温でバラの生育に悪影響を及ぼすことも多くなりました。暑さ寒さから根を守るために、完熟のたい肥でのマルチングをお勧めします。病気予防や雑草防除にも役立ちます。
肥料
バラは春から秋にかけて次々と新芽を出し、四季咲き性のバラは春から秋のシーズン中、繰り返し花を咲かせます。これだけ花を咲かせる植物ですから、肥料は欠かすことのできないものです。
肥料には有機肥料と化成肥料がありますが、バラの栽培には有機肥料を基本とすることをお勧めしています。緩やかな効き目で失敗が少なく、株を丈夫に育ててくれます。それぞれの利点がありますので、慣れてくると使い分けすると良いでしょう。
初心者の方は、市販の有機のバラの肥料を用意し、その商品の使用方法に従って肥料を施してください。肥料は与えすぎると、根に障害を与えたり、病気にかかりやすくなりますので、適量を適期与えることが大切です。
先代がバラを始めた60年前、肥料の代表は「油粕」と「骨粉」でした。現在、当園では、油粕の代わりに「ミラクル」を、骨粉の代わりに「ユーキリン」を使用しています。原材料は有機物で有機由来肥料となります。生育良好と感じていますし、シュートの発出も良く、臭いも少なく花も美しく沢山咲きます。1年中これだけでも十分育ちます。
生産者のための肥料ですが、ご希望が多く小分けして販売をしています。基本は、ユーキリン:ミラクルを1:1で混ぜて使用しますが、状況に応じて比率を変えていくことも可能です。安価で効果抜群の肥料で、大変ご好評をいただいています。中級者向けの肥料で経験が必要ですが、興味のある方は試してみてください。
蕾が膨らんだら、施肥をストップしましょう
花が咲く頃に肥料が効きすぎていると、「花が奇形になった」「花が小さくなった」、「色鮮やかさがない」、「切花で日持ちがしない」と、もったいない話になります。
鉢植え栽培の場合、肥料が多すぎると枯れ死する原因になりかねません。有機の置肥タイプで容量を守って使用することをお勧めしています。
※市販の肥料をご使用の際は、その使用方法に従ってください。