新苗の育て方
良い株に良い花が咲きます。根が張り充実した枝から良い花芽も生まれます。
新苗は幼木で、いわば「赤ちゃん苗」。まず「株を育てる」という意識をもってお世話をしてください。
株が育つと、そのバラ本来の美しい花は自然と咲いてくれるでしょう。
鉢植え | 地植え | |
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特徴 |
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植え付け | 植え付け直後は、底まで十分水が行き渡るようにたっぷりと与えましょう | |
おススメのサイズ
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一般的な株間として、木立ちバラは80cm、つる性バラは2m程度離しましょう。 | |
土づくり | 当店オリジナルのバラの培養土を使うと安心で便利です | |
赤玉土(小粒)2/3、堆肥1/3程度が基本です。鉢が大きい場合は、鉢底石も水はけに有効です。 | 地面に穴を直径60cm×深さ60cmほど掘りましょう。大変ですが、出来るだけ大きく深く掘ってください。堆肥を土壌の1/3ほど混ぜ合わせ穴に戻します。 | |
水やり | 蓄が上がり始め花が咲くころに一番水を欲しがりますのでご注意ください | |
底から水が流れ出るくらい与えます。土の表面の乾きを目安としてください。水の与えすぎは根腐れや 根を甘やかす事になり、乾燥に弱くなるなどの原因になります。 | 根付くまでは根を乾かさないように、与えるときはたっぷりと与えましょう。根付くにしたがって、水やりの回数を減らしていきます。 | |
肥料 | 植え付け後、2週間ほど経過してから施肥をスタートしましょう 蕾が小豆大になったら施肥をストップし、花後再開します |
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有機の固形肥料が安全です。製品の使用方法に従って、最初は少な目から始め失敗を防ぎましょう。 | 株から30~60cmほど離した場所に3か所程度に分けて与えましょう。製品の使用方法に従ってください。 | |
マルチング | 植えた植物の地表面(株元)を堆肥などで覆うことで、雑草の発生を防ぐほか、水分の蒸発や病害虫の発生を防ぐことができます。堆肥を7~8cmの厚さに敷いてください。根を暑さ寒さから守り、生育も順調になります。 | |
消毒 | 薬剤は基本的には予防的薬剤を通常使用し、病気を発生させないことが大切です。病気が発生したら治療的薬剤を一時的に投入すること、2~3種類の薬剤をローテーションで使用することで、病害虫に薬の耐性が付きづらくなり、効果が上がります。散布を行う際は、葉裏を中心に全体をまんべんなく丁寧に行うことが重要です。 |
新苗の植え替え
新苗は8月までは花をガマン!
新苗は4~6月に販売されますので、購入後すぐに大き目の鉢か地植えに植え替えましょう。鉢土を崩さないように鉢から抜き取り、土は「バラの培養土」をそのままストレートに使うと安心です。
5月から8月がバラの成長期ですので、なるべく早く植え替えをして、根を伸ばし、葉を繁らせることが大事です。
植え付け直後の水やりは、根は元の鉢のままだと思って、1週間程度は多いかな…と感じるくらいでいいでしょう。丈夫な苗は良い土を使っていればそうそう根腐れはしませんので、根の乾燥の方を気にしてあげてください。
すぐに地植えをするのが心配な方は、まずは鉢植えにして冬に地植えにされても良いでしょう。
植え替えをせず購入したままにしておくと、根が乾きやすく枯らしてしまう方が多いので、まずは植え替えることが成功への近道です。
摘蕾(てきらい)・・・蕾を取ろう
もったいない気持ちは分かりますが、幼木期である新苗にとって、花を咲かせることの方がとても可哀そうなことなのです。
四季咲き性のバラの場合、放置していると次々と花を咲かせます。花を咲かせることは、バラにとって栄養・水分をとられ株が疲れ切りとても負担です。早めに蕾を摘んで葉を増やし光合成をさせ、株を充実させましょう。
手でつまめないほどの枝の硬さになっていたら、5枚葉の上でハサミ切りましょう。
株元からシュートと呼ばれる新しい枝が出てきたら、根付いてきている証拠です。来年の主幹となりますので、花は咲かせずエネルギーを温存します。そのためにも高さ30cmほどに伸びてきたらピンチ(摘芯)をしましょう。
摘芯をすることにより開花をさせず、脇芽が伸び葉数が増え光合成が活発になることで他からシュートが出ることを促進させます。摘芯したシュートの先からも新芽が伸びますので、秋までに2~3回摘芯をすると大変立派な主幹となり、夏剪定、冬剪定後のその枝には美しい花が咲くことでしょう。
木立性のバラは9月に夏剪定を行うことで、新苗は秋花から十分楽しめます。あなたの春から夏の努力の結晶が美しい秋花となりますので頑張りましょう。
つるバラの場合も蕾が付いたら、8月末までは摘蕾をしてください。
一季咲きの場合は、一年目は基本的に蕾が付かないので、摘蕾の必要はりませんが、個人的には適宜「摘芯」をして、脇芽を出すことを促進させて全体的に枝数多く伸ばした方がのちの仕立てがしやすくなると思います。特に鉢植えの場合は、とびぬけて長い枝を1本作るよりも、全体的にほどほどの長さの枝が出ていた方がまとまり良くできます。
「摘芯」は芽の先を手でつまんで切っていくことです。手でつまめない硬さだったら、ハサミで切ればよいのです。
花がら切り
株が育つと四季咲き性バラは春から秋まで花を楽しめます。花が終わったら、すみやかに「5枚葉の上で」花がら切りをすることで次の花が咲きます。
外側に向かっている芽を選ぶのが理想ですが、見つからない場合は、横芽や3枚場でも充実した芽を選びましょう。芽の上5~8ミリのところを切ります。
一般的には「その枝の5枚葉を2~3枚残して切る」と言われますが、だいたい花枝の真ん中より若干下の5枚場と考えてくだされば結構です。
木立バラの剪定、整枝
剪定は、良く充実した芽を沢山出させる、つまり良い花を沢山咲かせ、しかも株を大きく生育させるために行います。
剪定の時期は、
冬剪定(12月末~2月)と
夏剪定(9月上~中旬)の2回です
※花がら切りと剪定は同意ではありません。花がら切りは適宜行ってください。
冬剪定
古枝・病害虫のついた枝・フトコロ枝・細い枝・混み合った枝を切除し、また太い枝でも新しい立派な枝が沢山あれば古い枝は整理します。
剪定の強さは、枝の2/3を切る強剪定、1/2を切る中剪定、1/3を切る弱剪定の3つに分けられます。
弱剪定では、残る芽数も多いので生育の良い株であれば、立派な花を沢山咲かせることができますが、勢いの弱い株では、芽は沢山出ても弱々しく立派な花を咲かせることはできません。
強剪定では、残された芽数が少ないですが、その分各芽に栄養が集中し立派な花が咲きます。
花数は弱剪定に比べれば少なくなりますが良い花が咲きます。中剪定は、上記2つの中間的な剪定で花も株の育ちも良い、最も一般的な方法です。
剪定の強さが決まればその株の樹形等を考えながら充実した芽の上で剪定します。この場合、芽の向きに注意して外側を向いている芽の上で切って、枝が外へ外へと広がって成長するようにすると陽当り風通しが良くなります。
その後、葉を取り除き、枝だけの状態にし、鉢植えの場合は、鉢から抜き、土替えを行います。
最初はなかなか切れなくて、株の高さがだんだんと高くなり、自分の背より上で花が咲くようになってしまいどうしてよいかわからない・・という声をよく耳にします。
大雑把な言い方ですが、「毎冬、膝の高さを目安にして切る」としてみてください。
夏剪定
四季咲き性のバラに夏剪定を行い、美しい秋花の開花を調整します。当地では9月10日前後に夏剪定をし、10月末から11月初旬に花を咲かせることを目指します。この時期が一番綺麗な花が咲き、日々気温が下がるので花持ちが良く長く楽しめます。
株全体の高さの1/2から1/3を切除するようにします。
剪定の強さは、冬剪定ほど強くするのではなく、混み合った枝や弱小枝を除き、株の姿を整え、良い芽の所で切りますが、あまり深切りしないように注意します。
夏剪定では、全ての枝に鋏を入れると、秋に春のような一斉咲きを期待できます。良い芽(良く充実した動いていない)を選び、充実度を揃えてやります。
春は何も手を加えなくとも、温度がバラの咲く速度を揃えますが、秋にはあなたの手で開花期を調整するのです。従いまして、慣れてきたら、一斉咲きでなく秋に順々に咲くことを目指すこともできるのです。
つるバラの剪定、整枝
つるバラの場合、「四季咲き性をもったつるバラ」と「一季咲き性つるバラ」とありますので、その性質に合った剪定方法を行います。
一般的に四季咲き性の強いシュラブやつるバラは、春の開花後に花がら切りをし、充分な施肥管理を行うことで、秋にも花を期待できます。一季咲き性のつるバラは、開花後に古枝を処理し、その後は生育伸長の時期に入るため、(場所の制限がなければ)剪定を行わなくても構いません。
冬剪定と誘引
つるバラは放置すると枝が伸びて収集が付かなくなってしまいます。バラの醍醐味であるつるバラを「ヤブ」ではなく、庭の主役にするためには年に1回休眠期の冬に剪定や誘引を行い、整えましょう。寒くなると枝も引き締まり、枝も曲がりやすくなり誘引が容易です。
充実した新しい枝を最優先に残しながら、古い枝、病害虫のついた枝、フトコロ枝(株の内部に向かって出た枝)、細い枝、混み合った枝を切除して整理します。
つるバラの場合、春の一番花が最も美しい時期です。特に一季咲き性つるバラでは、春の一番花がたわわに咲くバラですから、尚一層冬剪定では、花付きを多くするような枝の切り込みを行います。つまり、枝の花芽の付く芽をなるべく残し、逆に花芽の付きそうもない細い枝や、枝先端を切ります。
つるバラは木立バラと異なり枝は長く残し、春に沢山花を美しく咲かせることを目標に剪定が行われなければなりません。従って剪定も良い芽は沢山残すように、大輪系・中輪系つるバラでは目安として直径7~10mmより細い枝先を、また、小輪系(ミニ)つるバラでは、5mmより細い枝先を切除します。
剪定が済むと、スクリーン仕立て・ボール仕立て・アーチ仕立て等いろいろな仕立て方がありますが、その仕立て方に応じてフェンス・アーチ・柱等の構築物に春の開花時を想像しながら、枝の配置を考えて枝をしばりつけていきます。これを枝の「誘引」と言います。枝がまんべんなく支柱を覆うようにして咲かせると大変見栄えが良いので、剪定の時には、枝をやや多めに残しておいて、誘引がすんだら後で余分の枝を切り取るとよいでしょう。
年数が経つに従って一つの枝に咲く花数は減ってきます。枝の更新をするつもりで新しい枝を優先して残すように枝の世代交代をいたしましょう。
つるバラの誘引で特に注意しなければならないことは、立派な大きな枝でも図の左の枝のように直立状態に誘引すると、上部の芽だけしか伸長しないため花数が少なくなります。枝を横に水平状態になるように誘引すると、枝の元の方の芽まで伸長して花を沢山咲かせることができます。
つるバラを絡ませるフェンスやアーチの基礎はコンクリート等で補強してしっかりとした作りにしておきましょう。葉が繁り、雨を含んだバラの枝は予想以上に重いので、しっかりと支柱を立てて強風時に耐えられるような作りにします。気軽に使え移動もできる「羽付き杭」も便利です。
夏剪定
一季咲き性つるバラでは、夏剪定を行ってもあまり意味がありませんが、四季咲き性のつるバラでは、秋の美しい花を咲かせるためには、できれば行いましょう。
夏剪定の時期は木立バラと同じく9月上旬が目安です。
混み合った枝や弱小枝を除くと共に、大・中輪系つるバラでは、エンピツ程度の太さのところで枝を切ります。四季咲き性の強さに左右されますが、40~50日後には秋の美しい花を期待できます。
花後の枝の処理
満開を過ぎ散りかけた花は、大変見苦しいばかりか病気の発生源となります。つるバラでは花後放置しておくと、バラの実がだんだん大きくなり種子ができますが、バラにとって実が成るということは、そちらに栄養を取られて樹勢を弱らせ、後の生育も悪くなることになります。残花は開花した枝の元に葉を2~3枚残した所ですぐ切除します。
そうすることで、下の葉の元に新しい芽が2~3本伸びてきますが、四季咲性つるバラでは、その芽の先にまた花が咲くことが多く、伸びた新しい枝の元に2~3枚の葉を残して切除し、新芽が伸びるという繰り返しです。
一季咲性つるバラは春の花が一斉に咲いた後は翌年まで花は咲きません。
蕾花の残花処理が行われた後、残した枝よりそれぞれ1~3本の枝が長く伸長してきますから、風などで枝が折れないように支柱などに固定して、大切に育てます。来春の花を見事に咲かせる枝になりますので大切にしてください。
四季咲き性のつるバラは、一部の品種を除き、木立ちタイプほど四季咲き性が強くはありませんが、春以降はところどころで咲くことが多く、秋の花はやはり綺麗です。また、株が充実してくるほど、四季咲き性が出やすくなります。
一季咲き性つるバラの中にも、株が古くなってくると「狂い咲き」のように、秋にポツポツと花をつけるようになるものもあり、思いがけない楽しみに出会えます。
頂芽優勢(ちょうがゆうせい)
バラの特性の一つとして、頂芽優勢(ちょうがゆうせい)というのがあります。
枝先に近い芽の発育が旺盛でよく伸びる…という意味です。この特性を知ることで、お世話の仕方の意識が違ってきますのでご紹介します。
例えば、四季咲き性の木立バラを育てたとします。
- いいシュートが出てきたら嬉しくてそのままにしておく。
- その枝だけが妙に太くなり、そのうちホウキを逆にしたような蕾の房を付けてあまり綺麗でない花が沢山咲く。
- 9月の夏剪定でも、もったいなくて切れず、一番長いまま残す。
- がっかりするものの、太くて立派な枝なので、もったいなくて切れないので、長く伸ばしっぱなしにする。
- 太い枝以外のシュートが出ず、樹形が悪い。
- 数年たっても株元からは1本しかなく、木質化しているため怖くて切れず、ずっと高い視線のところで咲いている。
思いあたる方、いらっしゃいませんか。最初は切れないですよね、分かります。
しかし、誤解を恐れずに申しますと、
バラは切りながら大きくしていきましょう
太くて立派な枝が出たのはとても良いことですが、その枝の勢いが良すぎて栄養・水分が集中してしまい、株全体のバランスが壊れ、他の枝になかなか栄養が回らない状態です。
また、シュートの先の花は栄養過多で綺麗な花が咲かなかったでしょう。将来の主幹になり本来の美しい花を咲かせる大切な枝ですから、そんな不完全な花で栄養を使わせるのはもったいないことです。
頂芽優勢であることを考え、敢えて剪定で一番太く勢いのある枝を一番短く切ると、新しいシュートが出やすくなります。
見るからに勢いのあるシュートが出てきたときは、私は早めに摘芯して、勢いを分散させて、株全体に栄養が行くように仕向けるようにしています。
摘芯で頂芽優勢を崩すことで株のまとまりが良くなる、このことを一度怖がらずトライしてみると、沢山の脇芽が出てきて葉が繁るので、その意味をご理解いただけると思います。
大切なシュートだけれど、妙に太くなりすぎて伸びすぎても困る…と思ったら、誘引するフェンスの高さを考慮して、例えば、胸の高さまで伸びたら摘芯をするようにします。